535 / 1000
激闘の日【6回表】②
「160……。」
スピードガンの計測で、八良が放った球は160km/hを記録する。それもしっかりとストライクゾーンに入っていた。
「…ったぁ……。」
返球しながら畠は顔をしかめた。重い球は彼の左手に大きなダメージを与えた。
直倫はボックスを一歩出てバットを振り、深呼吸をして、もう一度マウンドを冷静に見つめる。
(もうアカンて……ハチローさん、もう…気持ちが、崩れてもぉてる……冷静やあらへん。見ろや!俺は外角低めのシュートを要求してんねん!俺の手を見ろや!ドアホ!チビ!糞エース!こっちを見ろや!)
振りかぶって投げた。
(低めのストレート!速いっ!)
カキンッ
直倫は合わせてきた。重い球を引っ張って、打つと全速力で駆けていく。
三遊間に打ち上げられた打球を、中川が全力で追いかける。
「うらぁ!」
ジャンプして、手を伸ばして、捕球すると何回も転がった。サードフライでアウトになる。
塁審の「アウト」の合図で馬橋のスタンドは湧いた。
直倫は徐々にスピードを落としながら駆け足でベンチに戻る。
ともだちにシェアしよう!