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激闘の日【6回表】②

「160……。」  スピードガンの計測で、八良が放った球は160km/hを記録する。それもしっかりとストライクゾーンに入っていた。 「…ったぁ……。」  返球しながら畠は顔をしかめた。重い球は彼の左手に大きなダメージを与えた。  直倫はボックスを一歩出てバットを振り、深呼吸をして、もう一度マウンドを冷静に見つめる。 (もうアカンて……ハチローさん、もう…気持ちが、崩れてもぉてる……冷静やあらへん。見ろや!俺は外角低めのシュートを要求してんねん!俺の手を見ろや!ドアホ!チビ!糞エース!こっちを見ろや!)  振りかぶって投げた。 (低めのストレート!速いっ!)  カキンッ  直倫は合わせてきた。重い球を引っ張って、打つと全速力で駆けていく。  三遊間に打ち上げられた打球を、中川が全力で追いかける。 「うらぁ!」  ジャンプして、手を伸ばして、捕球すると何回も転がった。サードフライでアウトになる。  塁審の「アウト」の合図で馬橋のスタンドは湧いた。  直倫は徐々にスピードを落としながら駆け足でベンチに戻る。

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