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激闘の日【6回表】③

「すんません、タイムで。」  畠は球審にそう告げるとマウンドの八良に駆け寄る。ミットで口元を隠すのも忘れるくらいに、畠の怒りは爆発した。 「何してんねんクソが!サインしてんねん!言うこときけやボケ!」  畠の異様な雰囲気に内野陣も気がついて急いで集まって畠を諌める。 「畠、落ち着けて。」 「落ち着くんはハチローさんの方や!赤松への投球、全部暴投なんじゃ!」 「あっくん、口、ミットで隠して…な?あっくんが冷静や無くなったらゲーム終わってまうて。」  2年の渡井が畠の肩を持って落ち着かせようとする。その言葉で畠は息を「はぁ、はぁ」と整える。 「やかましわ、畠。」  やっと口を開いた八良の目は、怒りと殺気に満ちていた。 「お前は、俺の投げる球を受けたらええねん。あのクソガキ仕留めたったんや、それでええやろ?」  畠の予想は見事に的中していた。2打席連続で出塁を許した、しかも経験が浅い1年に。  八良は脅威を感じていた。そして次の八良の獲物は。 (次は……松田くん、それか…4番の堀……。)  たらりと流れた汗を手の甲で拭うと、グッと表情を締めて、誰も目を合わせられない状態の八良の頬を手で固定し、至近距離で八良の目を見た畠は、訴える。 「これ以上は点をやらへん。それは俺かて同じや。こんなトコで終わらせへんぞ。せやから信じろ!わかったか!」  震える足を誤魔化して、怖くて流れそうな涙を必死に堪えて、八良から目を離さなかった。そして八良は更に睨みを返した。 「やったるわ。」  その様子を眺めていた廣澤監督はベンチの選手に声をかけた。 「次、出塁したら、金谷いくで。準備せぇ。」

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