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激闘の日【エース降板】③
畠がマウンドに駆け寄ると、伝令、内野陣、部長の金子、そして監督と金谷がやってきた。
「ハチロー、交代や。よぉやったで。」
廣澤監督は優しく八良の腕を取るが、八良はそれを振り払う。
「イヤや!まだや!ココは絶対譲られへん!」
「ハチローさん!もうアンタは降りてくれ!どうにも制御出来んよぉになってる!頭冷やせやボケ!」
「イヤや!絶対に…9回まで俺が、俺がぁ!」
「ハチロー!お前ええ加減にせぇや!」
駄々をこねる八良に畠と中川が怒鳴るが八良は譲歩しなかった。
すると八良の後ろに立った金子が、そっと八良を抱きしめ、耳元で囁いた。
「ハチロー…俺らの目標は優勝やろ。思い出せや、4月の悔しさを。」
「……いや、や…。」
「何の為に血反吐が出るまで練習したん?右手に大量のマメを作ったん?痛い思いしたん?考えてみぃ。」
「……い、や……や…。」
「まだ1回戦や。こんなとこでお前の駄々っ子で負けでもしたら、コイツらがどう思うか考えてみぃ。」
「……い、や…やぁ……。」
「お前は馬橋のエースやろ?この1番は飾りか?あぁ?」
「う…あ……あぁ…ち、ちが……。」
金子は抱きしめた手を緩めて、八良の体を監督に渡した。
監督は受け止めると、伝令と共に八良を支えながらベンチに戻っていく。
「ハチロー、今晩は出前の特上寿司やで。お前寿司好きやろ、帰って柔軟したら腹一杯食べや。」
「か、ん…と……はぁ…はぁ……す、ま…せ、うぇ……っ!」
「かまへん、お前はワシの自慢の松田八良や。胸張れ、な?」
「あああぁぁああぁああああ!」
八良の悲痛な叫びは、反対側の1塁にいた智裕にも届いていた。
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