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激闘の日【エース降板】④
『馬橋学院、ピッチャー交代です。今、エースの松田が監督に支えられながらベンチに戻ります。あー、これは悔しそうですね。』
『本人はやはり自分がエースだという自覚があり、初戦は完投するつもりでいたでしょうからね。しかしここまで素晴らしい投球でした。勝ち上がってもう一度マウンドに立って欲しいです。』
八良の悲痛な姿は中継でも大きく映し出され、四高を応援している区役所の中でも涙を流す人がいた。
「これって…まだ1回戦だよな……。」
「何これ…怖すぎなんだけど。」
死球を食らった智裕の顔が対照的な印象を狙うように映されたが、裕也と宮西は異変に気が付いた。
「椋丞……トモ、顔めっちゃ青くねーか?」
「うん……多分、あのハチローって人、なんだろうな。」
宮西と裕也はよく覚えていた。
中1の2学期、夏休みのほとんどをU-15日本代表と過ごした智裕が、キラキラした目で話していたことを。
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