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激闘の日【6回表】⑥

(八良先輩が、いない……八良、先輩が…い、ない…。)  智裕は呆然としているが、バッターボックスには3番の崎本が立っていた。  コーチャーボックスにいた立岡(たておか)に「ボーッとすんな!」と声を掛けられ、智裕は切り替えて集中する。  馬橋学院の次期エース、金谷もマウンド上で準備万端だった。  八良にも似た殺気を纏っている金谷に対して怯まずに接しているのはキャッチャーの畠だけだった。 (ハチローさんは天才や、せやけど金谷、お前も死ぬほど努力して此処まで来たこと、思い知らせたり!)  畠は自信満々にミットを真ん中に構えると、金谷はオーバースローで白球を放つ。  ズドンッ  その球の威力は八良にも劣らなかった。智裕は圧倒されてしまって、足がすくむ。金谷はそれを見逃さなかった。 (あ、球がこっちに向かってくる………戻んなきゃ…やばい…!)  だがファーストの渡井のグラブが智裕の腕に当たるのが先だった。  塁審の「アウト」コールで、ライトスタンドからは落胆の声がした。 (絶対にあんなヘタレに、俺は負けへん!)  金谷の眼光は益々鋭く、智裕を刺した。

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