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激闘の日【7回表】⑤
「清田くん!」
野村は「セーフ」の判定後3秒で清田の異変に気がつきベンチから飛び出した。その隣にいた森監督は腕を組んだまま少し大きな声で指示を出す。
「今中!ヘルメット被って準備しろ!」
「え、あ…はい!…松田、キャッチボールは他の奴とやれ。」
「………え……。」
(清田……嘘だろ……。)
運営のスタッフが担架を持って2塁ベースにかけていく、乗せられたのは清田だった。
「足を捻 っただけだと思うけど、少し腫れてて試合に出るのは難しいと思う。」
戻ってきた野村がベンチのメンバーにそう告げる。監督はまだ審判と話している。
「清田がヘッドスライディングなんかやったとこ見たことねーんだけど。」
「あいつ少し潔癖っすもん。練習でも普通のスライディングしかやんないですし。」
(清田が、ヘッドスライディング……?)
「代走!今中!」
「はい!」
(あれ、清田は……?あれ?キャッチボールは…今中先輩…?)
『第四高校、選手の交代をお知らせします。5番・清田くんに代わりまして、代走・今中くん、代走・今中くん、背番号“15”。』
(あれ、今中先輩…いない……肩作んなきゃ…次の回の守備……今中先輩……清田…?あれ?)
「絶対堀をホームに帰してやる!見とけやあぁぁぁぁぁ!」
「当麻ぁ!頼んだぞー!」
(俺は、エースだから…こんなところで……こんなとこで……。)
「全員野球だ!気を引き締めていけ!」
はい!
(こんなところで、終わっちゃいけない!)
「うあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!」
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