552 / 1000

激闘の日【7回表】⑤

「清田くん!」  野村は「セーフ」の判定後3秒で清田の異変に気がつきベンチから飛び出した。その隣にいた森監督は腕を組んだまま少し大きな声で指示を出す。 「今中!ヘルメット被って準備しろ!」 「え、あ…はい!…松田、キャッチボールは他の奴とやれ。」 「………え……。」 (清田……嘘だろ……。)  運営のスタッフが担架を持って2塁ベースにかけていく、乗せられたのは清田だった。 「足を(ひね)っただけだと思うけど、少し腫れてて試合に出るのは難しいと思う。」  戻ってきた野村がベンチのメンバーにそう告げる。監督はまだ審判と話している。 「清田がヘッドスライディングなんかやったとこ見たことねーんだけど。」 「あいつ少し潔癖っすもん。練習でも普通のスライディングしかやんないですし。」 (清田が、ヘッドスライディング……?) 「代走!今中!」 「はい!」 (あれ、清田は……?あれ?キャッチボールは…今中先輩…?) 『第四高校、選手の交代をお知らせします。5番・清田くんに代わりまして、代走・今中くん、代走・今中くん、背番号“15”。』 (あれ、今中先輩…いない……肩作んなきゃ…次の回の守備……今中先輩……清田…?あれ?) 「絶対堀をホームに帰してやる!見とけやあぁぁぁぁぁ!」 「当麻ぁ!頼んだぞー!」 (俺は、エースだから…こんなところで……こんなとこで……。) 「全員野球だ!気を引き締めていけ!」  はい! (こんなところで、終わっちゃいけない!) 「うあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!」

ともだちにシェアしよう!