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激闘の日【マツダくんの女房役】
俺が野球部に復帰したその日、サードに転向 したはずの清田がキャッチャーマスクを被っていた。
「……てめぇマジでいい加減な球投げたらぶっ殺すからな。」
最初から清田は厳しかった。少し八つ当たりも入ってた気がするけど。
「俺は今中さんを越えて背番号2をもらう。お前も死ぬ気で1を背負う覚悟見せろ。」
その約束を果たすために、俺は拓海さんを放置してまで全ての時間を捧げた。
「……松田、“フロントドア”って知ってるか?」
「え?何それ?」
「消える魔球。」
「何それ!漫画じゃん!」
「お前のツーシームとカットボール、スライダーの技術をフル活用すれば不可能じゃない。」
「マジかよ……出来るのか俺。」
落ち込む俺を清田はミットで腰を叩いた。いつもそうだった。
「バーカ。やるんだよ。」
小馬鹿にしたような顔をする、1年前と変わらない清田。
俺がいなくなった事、野球を奪われそうになった事、全部を許してはいないかもしれない。
なのに変わらないでいてくれた。受け入れてくれた。俺は清田を信じることにした。
だから嬉しかった。ベンチ入りメンバー発表で、監督の口から俺の次に名前を呼ばれたのがお前だったこと。
俺が拓海さんにフラれた時も、何かに気づいていたくせに何も言わなかった。それもお前の優しさと厳しさだと思った。
元どおりになったときは、またミットで腰を叩いてくれた。
清田、俺は、お前のために、もう1点だってやるものか!
馬橋がどうした!公立だ私立だ関係ねぇ!俺は、俺が、エースだ!
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