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激闘の日【7回表】⑦
スコアを記録しながら、野村は俯いて涙ぐんだ。
「清田くん、清田くんの絵図に戻ったよ……大丈夫、だから…。」
医務室で手当を受けている清田の元に、増田が駆け寄った。
「清田くん!追いついた!当麻先輩の犠牲フライで1点入った!」
清田は仰向けに横になっていたがガバッと上体を起こし、増田を見つめた。その目には涙が溢れていた。
「絶対、誰にも言うなよ……増田さん…。」
同点に追いついた7回表。迎え撃つ7回裏、松田智裕がマウンドに駆けていった。
だが、6番・津川を三振に抑えて、7番・畠を迎えた打席。
キャッチャーマスクを被った今中は異変に気がついた。
(サインは見ている…要求通りに…でも少しズレてる。疲れじゃなくて、暴投に近い…ような。制球も乱れ始めて、受ける球が痛い。)
2球目のストレート、畠は器用に合わせてきたがスタンドに入るファウル。カウント0-2、もう一度ストライクが入れば悠々と三振で2アウト。
(松田…見てるけど……サインは見てるけど…見えてない……クソ、監督の読み通りかよ!)
智裕は、八良の二の舞だと思われるような崩壊を始めていた。
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