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激闘の日【エースの務め】①
係員の男性に抱えられてベンチ裏に下がった智裕はなんとか自分の足で医務室へ向かった。
「ベルトを緩めて、まずは呼吸を落ち着かせてください!」
「はい!」
医務室の看護師は顔面蒼白になっている智裕を見て、付き添いの増田に指示した。
ベッドに腰を降ろさせて、増田は手際よく、ベルトを外し、スパイク、ソックスを脱がせた。そして智裕のボロボロで、ガタガタと震えている両の手を取り智裕の目を見ようと努めた。
「松田くん!私の声聞こえる⁉︎」
そんな増田の呼びかけに智裕は頷きもしなかった。パニックになって過呼吸を起こしている。
汗、涙、鼻水、唾液、胃液、ありとあらゆる体液が溢れる。増田はタオルで逐一拭う。
「落ち着こう、一緒に、呼吸して…お願い。いくよ?吸って…!」
智裕はまだ整わない、コントロール出来ない状態だった。増田は立ち上がって片方の手で背中をさすった。
「大丈夫、大丈夫だよ…吸って。」
何度も宥 めて、ようやく智裕から「スゥ」と呼吸の音が聞こえた。
「止めて。」
10秒数えて、その間も背中をさする。そして吐かせる。また吸わせる。それを何度も繰り返した。
「はぁ……はぁ……あぁ…あぁ…。」
何度も何度も繰り返して、落ち着いた頃に看護師が経口補水液を差し出した。
「どうですか?飲めそうですか?もし無理なら点滴にしますけど。」
「のみ、ます……。」
智裕は右手でペットボトルを受け取り、それを飲んだ。
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