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激闘の日【エースの務め】②

「さっき吐いたのに、大丈夫?」 「点滴だと…試合終わる。」 「え?」 「降りても……ちゃんと、見ないと…ダメだ、から…。」  落ち着いたはずなのに、増田の目に映った智裕の目には炎が灯されていた。 「それが、エース…でしょ?」  独り言のように呟いた智裕の声は、仕切られたカーテンの中にいた清田に届いた。  シャッとカーテンが開くと、けんけんしながら清田が智裕に近づいた。 「松田……立てるか?」 「おう……。」 「スパイク持てよ、行くぞ。増田、ベンチまで支えてくれるか?」 「だ、ダメだよ!2人ともまだ安静にしないと……!」  戻ろうとする清田と智裕を諌める増田だったが、2人の熱意が無言でも伝わる。  増田はキュッと唇を噛み締めて、拳を握り締めて、顔をあげた。 「あとで監督に怒られてよ。」  智裕の手を取り立ち上がらせ、清田を肩に抱えて、3人は看護師や係員の制止を無視してグラウンドへと戻っていった。

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