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激闘の日【試合終了】②

 トイレを出ると会場を後にする人達の会話が耳に入る。 「あの最強馬橋に2点差ってだけですげーよな。」 「ホンマ、馬橋が負けるんちゃう?ってなったよな。」 「あの赤松と堀ってやばない?なんであの2人公立におんねんな。」 「W松田の投げ合いは(しび)れたわー。」 「やっぱ今年はハチローで、来年は神奈川の松田がドラフトの目玉かな。」 「なぁ、U-18の試合ってBSか?」 「CSちゃう?ワシもあの2人もっかい見たいわー。」  その言葉たちに一起はまた泣きそうになる。裕紀は一起の手を握り、人混みの中に突入させた。 「せ、ん…せ…?」 「裕紀、だろ?」 「あ……。」 「一起、お前は本当に底抜けにいい奴だな。」  裕紀はぎゅっと力を込めて手を握ると、一起の方を見た。 「そんなお前が、可愛いよ。」  たったそんな一言で、微笑みで、先ほどまでの一起の悔しさが吹き飛んでしまった。  球場を出ると、真っ赤な夕陽に照らされて2人は手を繋いだまま歩いて行った。

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