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ノムラくんの警告②

 「野村克樹(カツキ)」の名前を、番号をタップする。  1コール、2コール、3コール… 『はい、野村です。』  少しだけ重苦しい声がスピーカー越しに聞こえて、拓海はビクッと肩をすくめた。 「の、野村くん…石蕗(ツワブキ)です。今日はお疲れ様でした。頑張ったね。」 『……ありがとうございます。』 「…疲れているところごめんね、今電話大丈夫だったかな?」 『ええ、今みんなで夕飯を食べてたところです。ちょっとうるさくて中抜けしてたんですけど。馬橋の人たちが盛り上げてくれてどんちゃん騒ぎです。』 「す、すごいね…大阪の人って賑やかなんだね。」 『数時間前まで死ぬ気で戦ったばかりなのに、タフですよ。』 「ふふふ……でも、思ったより楽しそうにしているから良かった。」  普通の会話を交わして、拓海は少しだけ緊張が解けた。 『先生、松田くんのことで電話してきたんじゃないんですか?』 「え…っと……うん。」  野村は数秒の沈黙、拓海も言葉を出すことが出来なかった。

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