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ノムラくんの警告③

『帰ってきてから、ストレッチやってシャワー浴びて…それから部屋にこもろうとしてたのを、馬橋の松田さんと中川さんが引っ張り出してくれて、今は夕飯食べてます。喋りも笑いもしませんけど。』 「…そ、う…なんだ……。その電話かけたんだけど電源切られてて…繋がんなくて……。」 『………先生、今日はもうこれで終わりましょう。』 「え?」  野村が打ち切ろうとする言葉を吐いたので、拓海は思わず「なんで?」と訊ねてしまう。 『すいません、先生……正直、今の松田くん、かなりギリギリなんですよ。』 「ギリギリって、何、が?」 『呼吸して普通に歩いて、飯を食べて、そういう当たり前の行動をしていることが極限状態なんですよ。こればかりは時間が経たないと、って感じです。』  拓海の想像を絶していた。それでもなお歩いているという智裕が拓海の知らない人のようで怖くなった。 「智裕くんと…話すことは、無理かな?声だけでも…聞きたいし…その……。」 『……先生さ、今の松田くんがどんな顔をしてるか想像出来ませんか?』 「え。」

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