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ホシノ先生とツワブキさん①
「あー、星野が生徒泣かしとるー!教師の体罰やー!」
料理と追加のビールを持って来た柴原が冗談めいた声で裕紀を責めるが、裕紀は相手にせず、一起の頭から手を離した。
「俺じゃねーよバーカ。さっさと焼けよ豚玉。」
「ウチはお客様に焼いていただくシステムでやっておりますぅ。」
「焼き方忘れたからやれよ。」
「お前ホンマ俺様でよぉ教師勤まっとるなぁ。」
ブツブツと文句を言いながら柴原は手際よくお好み焼きを焼き始めた。
「にいちゃん、うちのお好みは絶品なんやで。食べて早よ元気出しぃ。」
ジューっという音を鳴らしながら柴原が一起を慰めようと言葉をかけた。
「すいません……もう大丈夫、です…。」
「そーかそーか。あ、星野!別に法事はええけど、線香上げるくらいはせぇよ。俺が成海 にどやされるんやから。」
「知るか。自分の嫁さんだろ、なんとかしろよ。」
裕紀が冷たくあしらうと柴原の愚痴が溢れ出した。
「あのじゃじゃ馬が何とかなるなら俺も苦労せぇへんわ!はーぁ、郁海 と拓海 は心の優しい青年なんに、なんで長女はあんな暴力魔やねん。郁海か拓海が女やったらって何回も思おたわ。特に拓海は大人になってもその辺の女よりベッピンさんで可愛らしーし……なんで男やねん拓海!」
なぜか悲しそうに叫んで柴原はお好み焼きをひっくり返した。
「拓海くん、今俺の職場にいるぜ。」
「え。」
一起は動きが止まった。
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