593 / 1000

熱帯夜と嫉妬①(※)

 ホテルに戻るまでの道のりを一起は覚えられなかった。  知らない人だらけの街だからか、人が多いからか、裕紀は指を絡ませて堂々と手を握る。時々動かす感触に、ビクッと肩をすくめてします。 (どうしよう……嬉しい……。)  揺らめく夜の繁華街の光、速く動く群衆、この時間が止まればいいのに、一起は少しだけ願った。  ホテルの部屋に入ると、裕紀は猛獣になった。  まだ鉄板の匂いが微かに残る衣服を剥がされ、ベッドの上に放られる。  一起の上に馬乗りになる裕紀も上半身の衣服を脱ぐことを()いた。 「せ、ん…せ……。」 「そうじゃねーだろ?」 「……ひろ、き…さん……。」 「よくできました。」  噛み付くようなキスを一起は戸惑うことなく受け入れた。一起も欲していた。  舌を絡ませて、グチャグチャに掻き乱して、互いに熱い吐息と声が漏れる。  裕紀が唇を離すと。 「やだ…。」  一起は裕紀の肩を引き寄せ、下唇と上唇を甘噛みしてまたキスをねだる。 「タバコくせぇの、嫌じゃなかったっけ?」 「メンソールは好きです……。」  おねだりされた裕紀はそれに応えながら、一起のベルトを器用に外してジーパンのチャックを開けて、一起の興奮した象徴を取り出した。

ともだちにシェアしよう!