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熱帯夜と嫉妬⑤

 午前0時を回った。一起はすっかり体力を奪われて眠っていた。  その顔は決して幸せそうではなかった。  その横で裕紀は下着だけを穿いて、座ってタバコを吸った。 (……好き、か。)  裕紀の何度も脳内に響くのは、一起が自分へ向ける好意。それはとても純粋なものだと理解する。 「だから…まだ俺はお前に……ごめんな。」 (……コイツがいつか離れる時は、手を引こうって決めてる、けど。) 「離れたくねーなぁ……一起……。」  眠る一起の頬を撫でて、裕紀はまた涙を流した。

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