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屈辱のエース⑤

「あいつの降板は何パターンも想定した、だけど俺はそれについていけなかった。俺は自分のチームのエースに負けた……マウンドを見つめるのが怖かったよ。ミットを構える手がずっと震えてたよ……マジでこいつら化け物だわって。その一瞬の揺らぎが……アイツを不安にさせたのかもしれねーって……。」  泣きそうになる清田は左手で目を覆った。清田が上を向いて数秒、畠は清田の右腕を離した。 「………キョースケ、俺ハチローさんに明日なんて言えばいいんやろ…。」 「それは自分で考えろ…。」 「せや、な……。」  畠は立ち上がると清田の正面に立った。それを察知した清田は手をどけて、真っ直ぐと畠を見た。 「俺、絶対優勝したる!もう泣かへん!“日本のエース”を俺がリードする!」  真っ赤になった畠の顔が月明かりと寮の入り口の外灯のおかげでよく見えた。思わず清田は笑ってしまう。 「ひっでぇ顔。」 「うぅ……顔洗って戻らな……。」 「晃。」  清田は笑いながら松葉杖を手にとって立ち上がった。ズルズルと引きずるようにして畠に近づくと顔を畠の肩にコテンと乗せて左手で畠を少しだけ抱き寄せた。 「見てるからな……絶対また会おう。」 「………キョースケ……。」  そしてすぐに離れて、清田は真っ赤な顔をした畠の頭をクシャッと撫でて自分の部屋のある旧学生寮の方に戻って行った。 (あかん……どないしよ……え、男同士やで⁉︎せやけど……俺、キョースケが…。)

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