606 / 1000

惜敗の明朝①

_智裕、くん……触っていい? (いいよ、好きに触って。) _ん……好き、智裕くん……。 (拓海…俺も好きだよ。)  智裕の身体を拓海がまさぐる、はずはない。 「ん……ゆ、や……さん。」  拓海の手はもっと滑らかで綺麗で小さい。  智裕の肌に這う感触は、自分と同じようにゴツゴツとマメや皮が破れたような(てのひら)。  目が覚めていた智裕は恐る恐る後ろを振り返る。 「ゆう……や……。」  すぐそばにあるのは、まるでドラマの中に出てくるような美しい青年の寝顔だった。  寝ていても端正な口から発せられたのは、智裕の悪友の名前だった。  数秒、考えて。 「赤松起きろおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

ともだちにシェアしよう!