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惜敗の明朝①
_智裕、くん……触っていい?
(いいよ、好きに触って。)
_ん……好き、智裕くん……。
(拓海…俺も好きだよ。)
智裕の身体を拓海がまさぐる、はずはない。
「ん……ゆ、や……さん。」
拓海の手はもっと滑らかで綺麗で小さい。
智裕の肌に這う感触は、自分と同じようにゴツゴツとマメや皮が破れたような掌 。
目が覚めていた智裕は恐る恐る後ろを振り返る。
「ゆう……や……。」
すぐそばにあるのは、まるでドラマの中に出てくるような美しい青年の寝顔だった。
寝ていても端正な口から発せられたのは、智裕の悪友の名前だった。
数秒、考えて。
「赤松起きろおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
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