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戦友たちとの別れ④

「まっつん、またU-18はよろしゅうな。」 「え、あ…はい!」  無になっていた智裕はその呼びかけで気がつくと、差し出された握手に応えた。  そして智裕の手を離すと、隣にいた直倫にも手を差し出す。 「赤松くん。」 「あ…はい…。」 「。」 「……ありがとうございます。」  視線を交わす。直倫は中川の目に圧倒された。その目にはまだ計り知れないほどの闘志があったからだ。  戦い終えて改めて赤松は、自分の敵の強大さに気付かされた。 「まっつん、左腕どや?」  いつのまにか中川の後ろに来ていた金子が、智裕の左手を取る。 「ちょっとまだ痺れというか……力が上手く入らないです。昨日馬橋のトレーナーさんや監督からは神経の疲労とかって……。」  智裕は腑に落ちないような落ち込む顔をする。金子は察しがよく気がつく。 「またイップスかもしれへん、って思っとるんやろ?」  冷たいその言葉に智裕はバッと顔を上げた。その顔は恐怖と不安に満ちていた。  金子は両手で智裕の顔を挟む。 「ええか、3日で治せ。」 「で、も……。」 「お前はこの俺に死球当てた男やぞ。わかっとるよな?」 「は…。」 「こんなつまらんことで落ち込んでなんも出来ひん奴に死球当てられた俺めっちゃダサない?なぁ?」 「……あ、はい。」 「せやったら……わかっとるよな?」  金子の笑顔に智裕は縮こまる。 「分かってます分かってます!み、3日で!」 「明日や。」 「明日の朝までには145km/h投げれるようにします!」  智裕はビーンと右手で敬礼をした。 「明日の12時までにハチローか駿太に動画を送ること、ええな。」 「イエッサーーーーーー!」

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