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戦友たちとの別れ⑦

 四高の部員たちは新幹線に乗って、グッタリとしていた。 「どうだ、松田。」 「いや……俺よりお前の方が重症じゃね?」  新幹線は負傷バッテリー同士で隣になった。  清田は至って普通だが、足首には痛々しく包帯が巻かれている。智裕も半袖の制服なのでサポーターやテーピングを隠せなかった。 「松田、清田、お前らは今日の報告会は欠席でいい。着いたらすぐに病院に行け。」  通路を挟んで隣にいた森監督から冷静に指示されると2人は「はい。」と返事をした。 「松田…悪かったな……最後までリード出来なくて…。」  清田は窓の外を見ながらポツリと呟いて謝った。智裕もその言葉で俯いた。 「俺も……清田いなくなって頭真っ白になって…ごめん。」 「……俺たちは秋もあるから……絶対春行くぞ。」 「あぁ……。」  智裕は右手に力を込めた。左はまだ震えて力が入らない。 「その前に俺はU-18があるんだけど。」 「……明日の朝までに145km/hだっけ?俺は無理だから野村に頼めよ。」 「はぁ……またイップスだったらどーしよー……。」 「そういうマイナスな発言しない。」 「うぅ……。」 (……ま、今は恋人がいるんだろうし、大丈夫だろ。)  根拠のない安心をして清田は窓に向かってひとつため息を吐いた。  しかし智裕のスマホは昨日の朝から電源が切られたままだった。  それをONにする勇気を智裕がまだ出せないことに、清田は気付いていたが、時間の経過を信じることにした。

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