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おかえり、マツダくん①

 午後2時過ぎ、四高ナインを乗せた大型バスが学校に到着した。待ち構えた学校関係者、マスコミ、近隣の住民、高校野球ファンで正門に溢れかえっていた。  拓海は真っ赤に腫らした目を隠すように伏せ気味な表情で教職員が並ぶ場所にちょこんと立った。こういう時に頼りになる星野は有休で不在だった。  バスのドアが開いて、まず森監督が降りて一礼、それに続いて続々と部員たちが一礼をして降りてくる。  そして全員が降り切ってドアが閉まるが、主役とも言える2人の姿がなかった。生徒たちはそれに気がついて騒ついた。 「あれ?2年の松田と清田いなくね?」 「本当だ。」 「そういえば2人とも昨日倒れてたじゃん。」 「えーでも、最後の整列の時とかいたよー。」  ドクン ドクン ドクン  拓海は不安で心臓が壊れそうになる。微かに震えも出始めた。  一目でも智裕の姿を見れたら、そうすれば安心できると思っていた。なのに智裕はいなかった。  端に並んだマネージャー2人、拓海は野村と目が合うとバッと逸らしてしまった。  野村はメガネをクイっとあげて拓海の様子を数秒見て、増田に少し近づいた。 「増田さん……ちょっと頼みたいことがあるんだけど…いいかな?」 「え?」  拓海は顔を上げることが出来ず、そのままその場を去った。 「石蕗先生?どうしました?」 「すいません……ちょっと保健室に戻ります…。」 「顔色悪いですよ?休んでくださいね。」 「はい……ありがとうございます。」  心配してくれた女性職員が声をかけてくれたが、形式的な返事を素早くして、早足で保健室へ戻って行った。

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