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おかえり、マツダくん④
「先生……松田くんは先生が大好きですよ。」
「え?」
「昨日過呼吸起こしながら、うわ言のように先生を呼んでました。」
_あぁああ…た、く……あ、はぁ、ひぃ……あ、あぁ……
_松田くん⁉︎松田くんしっかりして!
_たぁ…く…み……あぁあああ……っ!
「ぜいぜい、息を乱しながらも、微 かに『拓海』って繰り返してました。私にはわかりましたよ。」
「……う、そ……。」
「嘘じゃないですよ。」
増田の笑顔から、真実だと分かると拓海はまた涙が溢れた。
「……智裕くん……会いたいよ……ごめんね……ごめん……。」
拓海は腰を曲げて両手で顔を覆う。増田は立ち上がって拓海を優しく抱き締めて背中をさすった。
「先生……もう、絶対に松田くんを離しちゃだめですよ。これからの方がもっと大変なんだから、ね?」
(そうだ…甲子園が終わっても、今度は智裕くんはもっと遠くに行っちゃうんだ…。)
「うん……強く、ならなきゃ……俺も……。」
(水上くんに、あんな風にもう思われたくない……俺でも、少しだけでも支えになりたい……。)
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