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おかえり、マツダくん⑤

 増田はまだ部での片付けが残っていたので拓海が落ち着いたところで保健室をあとにした。  その後は拓海も業務を淡々とこなして、気がついたら時計は16時を回っていた。あと1時間で定時だった。 (はぁ……俺大人なのに、高梨さん、増田さん、野村くん…みんなに助けられちゃってるなぁ…。)  少し落ち込みながら、外を見ると、植物の動きで風が吹いていることがわかる。  拓海がなんとなく窓を開けると、熱い風を肌で感じた。 (思い出すなぁ…智裕くんと初めて繋がった次の日……すっごく気持ちいい風があって、智裕くんが隣にいて…抱きしめてくれて……あったかくて、大好きだなぁって……。) _優しくてアホなまっつんだけしか知らないあんたに恋人の資格なんかねーんだよ。 (優しくて、あったかくて…ちょっとおっちょこちょいで……カッコ良くてキラキラした智裕くんも、苦しくて落ち込んで痛みと向き合う智裕くんも、全部、全部大好きだよ…それが智裕くんにも伝わればいいのになぁ……。)  そう思って拓海が空を見上げた時だった。  ガラッとドアが開いて、拓海が振り返る間も無く、後ろから優しく抱きしめられた。  熱い身体、体温、整える呼吸、少し汗くさいけど、拓海の大好きな匂い。 「拓海さん、ただいま。」  拓海はその声に安心して、枯れ果てたと思っていた涙が流れてきた。  両腕の力は同じくらいに引き寄せられて、拓海が振り向くと、唇を優しく触れられた。それを離して目を開けると。 (俺の、大好きな笑顔だ……。) 「おかえり、智裕くん。」

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