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負傷者の手当て①
学校から2駅ほど離れた場所にある市立病院の前に着くと、智裕と清田は降車した。
すぐ近くにそれぞれの母親が井戸端会議をして待ち構えていた。母たちは息子たちに気がつくと、駆け寄るでもなく悠々と歩いて近づく。
「あーあーあー、ケガ人共が。」
「恭介 、あんた骨折ったんじゃないでしょうね。」
心配そうな様子は一切なく、面倒ごとを起こしてくれたな、と呆れた言葉を投げられた。
「オフクロ、頑張った息子に労いとかないのか?」
「あら、これから貴方がまた怪我してたら誰が面倒見るんですか?」
「ぐぬぬ…。」
智裕は昨年のことがあるので何も言い返せなかった。隣にいた清田の母も智裕の母に同意する。
「足なんかやっちゃったら、何にも役に立ちませんものねぇ。」
「うるせーよ。俺だって怪我したくてしてるわけじゃねーっつの。」
「偉そうに言う前にちゃっちゃと病院入りなさい!」
「智裕、アンタが支えな。」
「俺もケガ人!」
「左がダメなら右を使えばいいでしょ?」
智裕の右手には用具やジャージの入った重たいバッグが提げられていたのだが、そんなことは母たちの計算にはないらしい。
智裕は渋々清田に肩を貸して、清田は負傷した右足を引き摺りながら病院に向かった。
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