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負傷者の手当て②
2人とも待合室で問診を受け、1時間ほどしてからレントゲン撮影や触診を受けた。
智裕は昨年の怪我もあるため、更にMRIの検査も受けた。
そしてそれぞれが診察室に通され医師から話をされる。
「結果としては異常は見られません、極度の疲労かと思われますので2、3日は左腕を出来るだけ動かさずに安静にして下さい。」
「あの……上手く力が入らないのも、疲労なんですか?俺、以前よりも投げた球数は少ないんですけど……。」
「んー…君は1年前に3回手術をしてますからね。問診でもリハビリ終了後にイップスを起こしたと伺っていますので…その可能性も否定できません。もし気になるようでしたら専門医を紹介しますけど。」
母も流石に困ったような顔をしたが、智裕は覚悟していた言葉が返ってきたので、思いのほか冷静でいられた。
専門医のいるクリニックの案内状を受け取って、智裕は診察室をあとにした。
「お母さん、会計に行ってくるから。ちょっとその辺で待ってて。」
そう言われて智裕は再び待合室のソファに腰を落とした。そして左腕を少し上げて、グー、パー、と繰り返そうとするが力が入らない。
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