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負傷者の手当て③

 嫌気がさして「はぁ」とため息を吐くと、外科の診察室から松葉杖をついた清田が出てきた。右足にはサポーターが巻かれている。 「清田、お前骨やっちゃった系?」  智裕は清田に近づいて訊ねる。 「いや、捻挫で全治2週間だと。ちょうど休みに入るから良かったよ。盆明けには復帰出来そうだし。」 「そっかー…良かったよ。」 「足がしばらく使えねー分、肩のトレーニングでもするしかねーかな。で、お前は?」  訊ね返されて、智裕はバツが悪そうに「あー」と頬を掻く。 「身体的には異常なしだから……そのぉ、イップスの可能性もあって、専門の医者紹介された。」 「マジかよ……クソヘタレのくせにイップスなんて生意気なんだよ。」 「あーーーー明日の朝までに投球の動画送らないといろんな意味で殺されんだけど。」 「……墓参りはしてやるよ。」  清田に見放されたところで母が戻ってきた。 「さてと、帰るわよ。清田くん、こんな馬鹿だけどこれからも仲良くしてやってね。」  母はそう言いながら智裕の頭を掴んで下げさせた。智裕は「いてぇよ!」と反論する。清田は恐縮してしまう。 「こちらこそ、これからもよろしくお願いします。」  そう当たり障りのない返事をすると、智裕の母はニコリと笑って、智裕を引っ張って帰っていった。 (松田の母親、思いっきり左腕引っ張ってたけど……やっぱ松田の親って肝座ってるよな。普通だったらもっと深刻になるんだろうけど。ま、うちの家族も大概だがな。)

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