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ただいま、ツワブキさん③

(くっそあちぃ!てゆーか左手動かねーから全然走れねー!10分以内とか鬼すぎだろ!ベースランニング並みの速度じゃねーと着かねーっつのおぉお!)  ジリジリと太陽が皮膚を焦がす。いきなり走ったものだから酸欠に近い症状が出てくる。  だけど智裕は足を止めなかった。 (拓海さん!ごめん!俺自分のことばっかで、拓海さんを悲しませてたことに気がつかなかった…本当にごめん!)  いつもは15分ほど歩いてたどり着く学校に10分もしないで校門に入った。昇降口は開放されていた。  急いで靴を履き替えて、保健室へ全力疾走する。  時刻は16時を回っていて、もしかしたら拓海はもういないかもしれない。  だけど智裕はそこまで考えが回っていなかった。  ただ、拓海が自分のせいで泣いていたという事実に心を痛めていた。  ガラッと勢いよく保健室のドアを開けると、窓を眺める白衣を着た後ろ姿が微妙に熱い風になびいていた。  そのキラキラした風景は間違いなく、智裕が愛しいと想う姿だった。

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