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ただいま、ツワブキさん⑩
定時になって拓海は職員室に戻った。
「石蕗先生、お疲れ様です。」
「あ、久米 先生…お疲れ様です。」
給湯コーナーに入ると事務員の久米に声をかけられた。
久米は拓海をジロジロと見ると、クスッと笑う。
「なんか今朝と全然お顔が違いますね。」
「え…そうですか?」
「はい。今朝は何というか…この世の終わりのような顔色で心配したんですけど。」
「す、すいません……。」
「やっぱり石蕗先生は可愛い笑顔がお似合いですよ。」
「え……っと……。」
久米は拓海の頭をクシャリと撫でて、「お疲れ様でした」とその場を後にした。
拓海は洗面台にあった鏡で自分の顔を見る。
(目、腫れちゃってるなぁ……。)
でも心はポカポカに満たされていた。
「おかえり……智裕くん。」
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