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四高野球部の帰還①

「初戦で負けてしまいましたが、悔い無く、全力で戦うことが出来ました。沢山の方の応援が私たちの力になりました。本当に、本当に、ありがとうございました!」  ありがとうございました!  (ほり)が代表で挨拶をして、部員一同が頭を下げると割れんばかりの拍手が起こった。  それから校長や市議会議員などの挨拶が続き、30分もしない内に報告会自体は終了した。    その後、マスコミ対応として森監督と堀、そしてエースの智裕と女房役の清田が不在の為、代わりに今大会で注目された直倫がインタビューを受けることになった。  森監督を中心に堀と直倫が並ぶと、カメラの照準は直倫に向いていた。  その様子を今中(いまなか)を始めとする3年生が遠くから見守る。 「すっげーなー…赤松。」 「だなぁ……。」 「県大会首位打者と盗塁成功率10割、西の松田から初回安打、で顔も芸能人並みに良し…漫画か!」 「マスコミも食いつくだろーなー。」  みんなが感心する中、新幹線とバスで隣だった白崎(しらさき)と三遊間コンビだった当麻(とうま)は苦い顔をして直倫を見ていた。 「赤松、気にすんなとは言ったけどなぁ…。」 「松田と清田のことで自分を責めてんなぁ、笑顔ゼロだし。」 「なぁ……俺ちょっと昨夜聞こえちゃったんだけど。」 「何が?」 「馬橋の中川に、お前は聖斎(せいさい)学園に戻れ、って言われてんの。」  当麻の言葉に白崎は少し俯いた。 「そっか……アイツ、松田に憧れて四高(ウチ)に来たんだっけ。」 「で、松田は松田でまたイップスなんてなったら今度こそ辞めちまうかもな。」 「……仕方ねーかもだけど、やーだな。」  記者やアナウンサーの質問を毅然として答える直倫だが、愛想はゼロで力尽きたような目をしていた。  それでもイケメンは絵になっていた。

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