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四高野球部の帰還②
3人のインタビューが終わると正門から人が撤収していく。部員たちは用具倉庫や部室に道具を片していた。
「あれ?増田ちゃんは?」
今中が増田の不在に気がつき、野村に訊ねた。野村は取り繕うような笑顔で答えた。
「ちょっと頼みごとをしています。」
「そっかそっかー、増田ちゃんも彼氏に従順だねぇ。」
「……はい?」
「え?だから、いい彼女だな、増田ちゃん。」
野村は今中の言葉に少しだけ動揺したのか、持っていたクリップボードを落とした。
「ま、増田さんが…誰の彼女、ですって?」
「……え?違うの?野村と増田ちゃんって付き合ってんじゃねーの?」
「俺、彼女とかいたことないですけど。」
「…………あっそう…野村。」
「何ですか?」
「顔真っ赤。」
今中にニヤニヤしながら指摘すると、野村は拾ったクリップボードで今中の後頭部を叩いてスコアノートを収納している棚の前に逃げた。
そしてそんな絶妙すぎるタイミングだった。部室からノック音がした。
「すいませーん、増田ですー。入っても大丈夫ですか?」
その声に野村は動揺してバサバサと掴んでたノートを全部落とした。
その様子を他の部員たちは面白がり始めた。
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