657 / 1000
ピアス⑦
日曜日、裕也は直倫と一緒に繁華街まで出かけた。
ピアスホールが完成した後に着けるピアスを探しに雑貨屋などを巡るためだった。
電車に揺られながら、直倫は裕也の右耳を観察する。
「裕也さん…これ開けすぎじゃないですか?」
「そーか?左2つと右に1つだしそんなに多くないと思うけど…あ、でも右の軟骨は痛かったかも。」
「へー…これ自分でやったんですか?」
「いや、椋丞に開けてもらってる。」
「………宮西先輩に耳触らせて、感じたりしてませんよね?」
「するか!キモすぎるだろ!」
「というか俺以外の男に簡単に触らせないでくださいよ。裕也さん、可愛いんですから。」
「あのな、椋丞とは10年以上の付き合いだから死んでもそんなことありえねぇから!」
裕也は「はぁ。」とため息を吐くと、直倫を睨んで見上げた。
「今日だってわざわざお前呼んだのは、ここのピアスをお前に選んでもらう為なんだけど。」
「え?」
「俺、アクセとか服は自分で選ぶ主義なんだからな。感謝しろよ。」
「……どうして俺に選ばせてくれるんですか?」
その問いに裕也は少し戸惑うが、下を向いて赤面しながら答えた。
「だって…お前はアクセとか着けらんねーし……お揃いで身につけるのとか無理だったら……せめてお前が…その……選んでくれたの…俺が…着けて、やりてーな…って…。」
目的の駅まであと2駅、直倫は理性をフル稼働して裕也の手をそっと握りしめた。
ともだちにシェアしよう!