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マツダくんの部屋③

「何が知りたい?」  優しく問いかけられると、拓海は少し安心して「えっと…。」と写真立てに指を添えた。 「智裕くんの隣の人って、この前対戦した人?」 「そ。それが八良(ハチロー)先輩で……この坊主のガタイいいのがシュンちゃん先輩、で、この仏みたいな顔をしてるのが馬橋(まはし)の部長……この時はこの3人と仲良かったかな。この年、俺以外2年生いなかったし。」 「智裕くんって1年生の時から代表だったって…お父さんが。」 「うん……まぁね。何で俺なんだろうって毎日思ってた。だけどね、八良先輩のお陰で世界を相手に投げられたんだ。あの人も、かなり苦労してたから……うん。」 (……それは智裕くんも、だよね……。) 「なんか、全然違う世界のお話みたい…。」 「そう?俺にとってはずっと現実だったからなぁ……。」 「その…智裕くんは、高校は大阪に行きたかった、の?」 「うーん……そうだったな。」 「それは…この先輩たちがいたから?」 「も、あるけど……。」  智裕は目線を机の方に向けた。  そこにはプロ野球選手のポスターが飾られてあった。拓海も同じ方向を見る。

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