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動き出す夏の恋⑥
翌日、午後11時半に最寄りの駅に全員集合した。
最後にギリギリでやってきたのは遅刻魔の智裕だった。
「よーっす、おはー。」
「来た、遅刻魔。」
何気にこうやって遊ぶのは智裕が野球部に復帰してからは初めてで、おおよそ3ヶ月振りだった。
そして見慣れない人物が1人。
「……メンズノ●ノ?」
「はい?」
初めて見る直倫の私服姿は通りすがる女性たちが何度見もするほどの出で立ちだった。
無地の白シャツと黒のパンツ、髪の毛も多少ワックスで遊んでいる感じでシンプルなシルバーのネックレスに靴は小綺麗な白に黒ラインのスニーカー、これだけのシンプルな格好で眩しくて直視出来なかった。
「この服、兄のお下がりなんです。」
「マジで⁉︎これ直能 さんの⁉︎」
直能マニアの智裕はすぐに食いついて直倫の服にしがみついた。
カシャッ
突然鳴ったシャッター音で智裕は正気に戻った。
「ふふふ、つい条件反射で。」
シャッターを切ったのは増田だった。
増田はいつもひっつめている髪の毛を下ろして少しゆるふわなパーマがかかっていた。
白のオフショルダー、ジーンズのハイウエストスカート、ハイカットのスニーカー、アクセサリーもシンプルに小さい花がモチーフのネックレスだけ。
いかにも女子な格好で、先日までのジャージ姿とのギャップに智裕は少しときめいた。
(あれ?増田さんってこんなに可愛かった?あれ、俺、前にもおんなじこと思ったような…。)
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