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動き出す夏の恋⑦
「松田くんと赤松くんってずっとジャージか制服かユニフォームしか見てなかったから新鮮だなー。」
「お、おお…う。」
智裕は伸ばしている微妙な坊主頭を隠すようにカンカン帽子を被って、黒のタンクトップにライトブルーの半袖シャツを羽織り、ジーンズを穿いて、ブレスレットやネックレスを2、3個ずつ身に付けていた。左耳には拓海とお揃いのマグネットピアスをつけている。
野球から離れている間に、裕也や宮西 に色々叩き込まれたおかげでファッションには気を使えるようになった。
「大竹ー、お前彼氏がカッコ良すぎて直視出来ねーの?」
「は?何が?」
直倫の方を一向に見ない裕也はいつも通りなストリート系のファッションだった。
少しダボついたTシャツにハーフパンツ、少しだけ底上げしたようなスニーカー、そしてキャップを被っている。
「おーおー、かっこよすぎて見れないのかしらー。」
「確かに言われたらメンズノ●ノだな、赤松くん。」
ニヤニヤと笑う高梨は、増田とは対照的で細身のダメージジーンズとシンプルなオフホワイトのTシャツに白いスニーカー、裕也と同じようなキャップをかぶって小さなリュックを背負ったボーイッシュカジュアルな格好。
そして一起もさすがイケメンで、智裕と同じようにジーンズ柄の半袖シャツの下にボーダーのTシャツを着て、ジーンズを穿いただけのシンプルな格好なのにファッション誌の表紙のようだった。
「ん?野村?眼鏡は?」
「え?あぁ、ラ●ンド1でしょ?スポーツ用の眼鏡も変だしコンタクトなんだけど……変かな?」
「何だろう…少女漫画?」
「ん?」
野村は青のサマーニットに紺色のスキニーパンツ、ローカットスニーカーといつもの眼鏡からはイメージ出来ないほどにオシャレだった。
髪の毛も少し毛先をワックスで跳ねさせて、なにより眼鏡をとった顔は、今流行りの塩顔のイケメンだった。
あまりのギャップに智裕は驚愕して開いた口が塞がらなかった。
「カッちゃんって眼鏡ありきだったよな。水泳の時もかけてたから完全に眼鏡オフは初めてかもな。」
「矯正しないと何も見えないからねー。」
智裕はちらりと増田の方を見ると、増田は直倫と話していて野村の方を一向に見ていなかった。
(マジかよ…普通女なら赤松と話す方が緊張しねぇ?……てか赤松なんかスマホでメモしてっし!何吹き込んでだ増田さん!)
「さーて、そろそろ行くか。電車すぐ来るぞ。」
いつものように引率は一起がして、一行は南武線のホームに向かった。
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