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動き出す夏の恋(14)

 それから夕方になるまでガッツリ遊び続けた一行は、電車に乗って乗り換えをする大きな駅に向かった。 「はー、久しぶりにつっかれたなー。」  根っからのスポーツ好きの裕也は充実した笑顔だった。  智裕はあの後も直倫だけが声を掛けられたりしてショックを受けていた。 「赤松くん凄いな、あの人気ぶりは。」  一起が感心すると智裕は隣に座っていた高梨に(すが)った。 「高梨ぃ…俺やっぱユニフォーム着なきゃただのモブ?」 「そうね、今日それが証明されわね。」 「はぁぁあ……。」 「いいじゃない、ツワブキちゃんはときめいてくれるわよ。県大会決勝戦のあんたの空振りシーンも乙女みたいな目ぇしてたし。」 「……ならいっか。」  智裕は高梨からパッと手を離して開き直った。  掴まれた高梨の肩は、まだ熱を持っていた。 「増田さん、結構動いたけど疲れてない?」 「疲れたけど楽しかったよ。」 「そうか、良かった。もし疲れてたら肩、貸すよ。」 「うん、ありがとう。」  いい雰囲気になっている増田と野村を、他がひっそりと見守る。そして直倫以外の4人がグループ通信を確認する。 _改札出て、駅前広場に出たら作戦決行よ! _りょ _大竹は赤松くんと一旦南口に、江川くんは駅に入って反対側のどこか適当な場所に、私と松田もあとから合流する。 _ちょまて、俺は? _そのまま赤松と乳繰りあってろ。 _ふざけんな!俺も一緒に行くし! _それは赤松くん次第だろ。 _絶対ヤられる…やめろ!  4人は目を合わせて小さく頷いた。 (野村が増田さんにね……全く気が付かなかったけど、あの雰囲気は完全にカップルだな。しかもお似合いだし。もし本当に付き合ったら、あんな風に人前でも手を繋いだり、肩を寄せ合ったりしても……。)  智裕の心が少しだけ、ズキンと痛んだ。その妙な表情を高梨は察していた。

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