693 / 1000
動き出す夏の恋(15)
終点で乗り換えの駅に到着すると、乗り換えの為に違う路線の駅に歩く。
「夕飯さ、あのショッピングモールのフードコートにする?」
「そうだね、混んでないかな?」
「回転寿司のとこは混んでるかもねー。」
「寿司とか無理だろ。」
「あ、たしかビビンバとかあるよね。あと中華も。」
「中華っていうより中華系アメリカ料理だよねあれ。」
そして駅を通り過ぎて大きな広場に辿り着いた時、まず動き出したのは一起だった。
「あ、ごめん、俺今日バイトだからここでな。」
「おーそっか、頑張れー江川っち。」
「悪いな、野村、増田さん。」
「うん、頑張ってね、江川くん。」
「あんまり無理したらダメだよ。」
2人には怪しまれず一起は退散した。次に動き出したのは裕也だった。
「あ!俺買いたいものあったんだ!限定品!直倫行くぞ!」
「え、あ、あの…俺もですか?」
「おう!お前ならその辺の女が譲ってくれるかもしれねぇし!」
「うわ、きたねぇな大竹。」
「うるせー!じゃあな!」
裕也は直倫のシャツをグイグイと引っ張って、駅の方に消えていった。
(大竹……赤松の顔、多分発情してる。路上はやめとけよ…。)
智裕は2人が去っていった方向に向かって合掌した。
「じゃあ4人で行こうか。」
一起がいなくなったので、野村が引率の先生みたいになった。智裕と増田は野村について行こうと歩き出す。
すると智裕はシャツを引っ張られた。
振り返ると、切なそうな表情をする高梨が智裕を見上げている。
「ごめん……松田、に…話ある……。」
高梨の振り絞った言葉に、増田と野村はハッとした。
(おいおいおい、すげー迫真の演技だな高梨!これから告白するみてぇな感じかぁ。昨日は俺と偽装デートとか嫌がってたくせに、友達のためになると流石だな。)
「松田、いいかな。」
「あ、お、うん。ごめん、じゃあ!」
智裕は高梨のあとをついて行くように駅に向かっていった。
野村と増田はそれを立ち止まって見送った。
ともだちにシェアしよう!