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タカナシさんの積年②

「……バカなの?」 「あ?何が?」 「ほんと…バカすぎ……。」 「助けてやったのにバカはねーんじゃねーの?早く行こうぜ、ス●バどこ?」  智裕が手を引いて進もうとするが、高梨が動かないので、智裕はまた振り返った。手は繋がれたまま。 「高梨ぃ…何?」 「……う…うぅ……バカ、でしょ…。」 「……はぁ?泣くほど俺と歩くの嫌か?」 「違う!違うから……手、離してよ…。」  高梨は距離をとることを懇願した。  しかし智裕は放って置けないと言うように更に強く手を握って、高梨を自分のそばに引き寄せた。  そして屈んで、下を向く高梨を覗き込む。 「……つらい…。」 「は?」 「増田さんと……カッちゃんが羨ましいよ……。」 「うん…。」 「修学旅行、の時も……りょーちゃんと…ヨーコさんが…羨ましかったよ。」 「うん…。」 「私…は……ずっと………ずっと……。」  ますます俯いた高梨を庇うように智裕は片手で高梨を抱き寄せた。 「キャップ邪魔だな、横向け、ブース。」 「……アホ、クソヘタレ……そういうとこ、が……ツワブキちゃん泣かせるのよ…バカ……。」 「そうかもな…。」  更にギュッと抱きしめられて、高梨は智裕の心臓音を聞いた。

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