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花火大会の日③

「松田。」  ゆらりと立ち上がった里崎は、智裕の耳を引っ張っりリビングから叩き出した。 「何すんだよヨーコさん!」 「あんた…優里と何かあったでしょ?」 「…………ヨーコさん知ってたんだろ?」  智裕はふて腐れたように里崎を見た。  その目を見て里崎は呆れたようなため息を吐いた。 「小6の修学旅行の時、あれで気付かないのが天才だわ。」 「あーあーそうですねー。」 「松田さ、自分に向けられる好意くらい気付いて行動しないと石蕗先生傷付けるよ。」 「はぁ?だって俺なんてモテないし、拓海さん以外に。」  またもとぼけた発言に、里崎は智裕の胸ぐらを掴み見上げて睨んだ。 「よくよく周りを見てみろっつの。優里だって何年片想いしてたと思うの?」 「……怖い、ヨーコさん。」 「このことを先生に伝えるのは優里のやるべきこと。だけど、その後のフォロー、きっちりしなさいよ。この罪作り!」  解放された智裕はゴホゴホと咳き込んだ。そしてゴミを見るような目で(さげす)んでくる里崎に少しときめいた。

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