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花火大会の日④
高梨は里崎に促されて、拓海と2人でコンビニまで買い出しに行くことになった。
「ツワブキちゃん……ごめんなさい。」
「……えっと…何かあったの?」
「ん……智裕に、好き、って言っちゃった……んだよね。」
「そっか……。」
拓海が微笑んで反応すると、高梨は歩みを止めてしまった。
また涙が出そうになっている。
「大丈夫…しっかりフラれたから。智裕はツワブキちゃん一筋だから。」
頑張って笑顔を拓海に向けると、拓海は高梨を抱きしめた。
少しだけ背の高い拓海に包まれて、高梨はポロリと一滴涙を流した。
「頑張った、ね……。」
「……言うつもりなかったんだけど…けどこれで胸のつっかえが取れたかなー。」
「………うん。」
拓海をトンと軽く押して距離を取ると、高梨は晴れ晴れとした笑顔を見せた。
「もっとカッコいい、ヘタレでもない彼氏を作るって目標も出来たから!あ、ツワブキちゃんも射程圏内だから。」
手を銃の形にして「バン」と撃ち抜くと、無邪気にコンビニへ歩き出した。
(呼び捨て……いいな……高梨さん…。)
「ツワブキちゃん。」
「ん?」
「あのね、私はあんなクソのことを『智裕くん』とか死んでも呼べないから元に戻しただけだから。」
「え…。」
「ウチらの母親とか除けば、『智裕くん』なんて呼んでるのツワブキちゃんだけだから、無理に直さなくてもいいと思うよ。」
(高梨さん、気がついて……。)
「まぁ、たまに蔑んだ目で呼び捨てにすればあのドMは悦ぶかもね。」
拓海は一気に顔が赤くなった。
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