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花火大会の日⑥
ドンッ
最初の花火が上がって、全員が空を見上げた。
その隙に、智裕は拓海に深くキスをした。呼吸をする為に漏れる拓海の声は、花火の轟音で消された。
「拓海……かわい。」
「ふあぁ……と、も…ひろ……。」
「え?」
「智裕、好き……。」
拓海は何故か涙を流して、智裕にギュウギュウ抱きついた。
(ん?智裕って、呼び捨て……あぁ、そっか…優里がそう呼んでたからか…。)
「拓海。」
智裕は拓海の顔を両手で持ち、自分の方に見上げさせるとまたキスをした。
「あー!ちゅー!」
宮西の肩に乗ってた茉莉が2人のキスに気がついて声をあげたが、2人は気付くことなく口付けをずっと続けた。
驚き囃し立てたりしている中、裕也はスマホ越しに花火を見上げていた。
一頻りに撮ったら、すぐにメッセージアプリで直倫 に送信した。文字は何も添えなかった。
(直倫……実家でゆっくり…してんだよなぁ……にしても…なんか甲子園の時と同じ状況のような気がするんだけど。)
ドンッ ドンッ
「たーまやー」
「やーやあー!」
「茉莉ちゃん上手ねー。」
宮西と里崎はまるで家族のよう。
「すっごいキレー。」
「本当、いいね此処。」
そっと手を繋いで花火の光を楽しむ増田と野村。
「大竹、彼氏いなくて寂しいの?」
「うるせー。お前だってハブじゃねーか独りモン。」
自然と隣り合った高梨と裕也。
「拓海……花火終わるまで、甘えていいよ。」
「うん……ありがと…。」
フェンスに凭 れた智裕に寄りかかって抱きしめられる拓海。
それぞれを、人々を、彩りの光が優しく照らした、夏の夜。
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