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アカマツ兄弟と海の景色⑤
キャッチボールを存分に楽しんだ2人は、裸足になって岩場に腰をかけて足湯のように足だけ海水に浸かって、太平洋を眺める。
「兄さん……実は馬橋の中川 さんにも、試合の後に言われました。聖斎に戻るべきだ、と。」
「…そうだったんだね。」
「分かってます…今回何故俺が選ばれなかったのか。公立高校でズバ抜けて能力があるわけでもない…時間も私立に比べて限られてくる…なら基礎がしっかりとした選手が選ばれると…自分の実力云々以外のことが少なからず影響していることを…痛感しました。」
「そうだね…決して直倫の実力が劣っているわけではない。あのトライアウトを最後まで見てた僕が思ったんだからこれ以上自分を低く見る必要はないよ。」
パシャッと直能は海水を蹴るが、直倫は海面にじっと視線を落としたまま。
「でも俺は…松田先輩がもう一度あのマウンドに立つところを見たいんです。だから…今は、今のままで頑張ります。」
少し顔を上げて直能を見ると、直倫はにこりと笑う。すると直能もつられるように微笑んだ。
ピロリンッ
このタイミングで直倫のスマホの音が鳴った。
直倫はポケットに突っ込んでいたスマホを取り出し画面を見たら、智裕からのメッセージだった。
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