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アカマツ兄弟と海の景色⑥

「松田先輩…珍しいな……。」  確認すると動画とメッセージが添えられていた。 _大竹、なんか心配してたぞー。  そして動画を再生すると、カラオケボックスにいる裕也がマイクを持っていてロックの音楽が流れ始めた。宮西も見切れているのでいつものメンツで遊んでいたのが(うかが)える。  歌い始めたのは直倫の知らない曲だった。  けど裕也はとても楽しそうにカメラに目線を向けていて、そのメッセージは直倫に送られているようにも見えた。 「直倫?また泣いているのか?」  直能に指摘されて直倫は気が付いた。目をこすりながら直倫は答えた。 「泣くのはこれで、最後にします……もう涙は流しません。」 「そうか…この人は、友人?」  直能が訊ねた時だった。 『大竹ー、赤松に一言。』 『あ?直倫、ういろう買ってこいよー!』 『素直に“寂しいから早く帰って来てよダーリン♡”って言えよバーカ。』 『言うわけねーだろこのハゲ!』  智裕と裕也の口喧嘩で動画は終了した。  直能は少しだけ黙ったあと、愉快そうに笑った。 「今の声、松田くん?」 「あ……はい……。」 「今の歌ってた方は、直倫のとても大切な人なのかな?」 「……はい、とても大事な人です。」 「そうか…。」  直倫の幸せそうな表情を見ると、直能は安堵したように微笑んで直倫と同じく海を眺めた。

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