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マツダくんのデブエット作戦④
次の日、野球部は束の間の休暇を終えて再び練習の日々が始まった。
しかし今日は鈍 った身体を馴 らす程度で、ランニング、ストレッチ、それからキャッチボールやティーバッティング程度のメニューだった。
その為予定よりも30分近く早く終わってしまった。
練習を終えたら智裕はさっさと着替えて部室をあとにした。その背中を見送る2年の川瀬 と香山 は「キモい」と口を揃えて呟いた。
もちろん智裕が向かったのは。
「つっわぶきせんせー!」
ご陽気に保健室のドアを開けると、机の上でパソコン作業をして白衣を着た拓海がいた。
智裕はそっとドアを閉めると、拓海に駆け寄り椅子に座る拓海をギュッと抱き締めた。
「智裕くん、どうしたの?」
気持ち小声で戸惑う声を出す拓海に智裕は「んー?」ととぼけながらスリスリと擦り寄る。
「ちょっと部活早く終わったから会いに来たんだけどー。」
「そ、そう…あ、あの……窓、誰が見てるかわかんないから…。」
「あ、そっか。ごめん!」
智裕は拓海が制する声で身体を離すと、拓海のツムジにキスを落とした。
拓海はそれだけで真っ赤になるが嬉しくてフワッと笑う。
「あ、拓海さん、ちょっと体重計乗っていい?」
「あ、どうぞ。上履きは脱いでね。」
智裕は靴を脱いで立派な体重計に乗った。
そしてデジタルの表示が出る。「67.8kg」
「はあぁ………やっぱりかぁ……。」
体重計から降りしゃがみ込んで落胆する。
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