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マツダくんのデブエット作戦⑥
楽しそうな智裕の声に拓海はビクッとして固まった。
(水上…って……言った?)
「うん、今まだ学校…保健室で涼んでる……ご近所特権だっつの、ツワブキ先生優しいしー……うるせー!じゃあ待ってる。」
通話を終了すると、智裕は安堵したような笑顔になって拓海の方を振り向いた。
「拓海さん、もうちょっとここにいてもいい?水上って後輩と部活終わりに待ち合わせててさ、なんか水上も拓海さんに会いたいってさ。」
「え?」
「水上、なんか今すげー忙しくて癒しが欲しいとかなんとか…やっぱみんなのツワブキ先生は人気者だよなー。」
智裕は口を尖らせて「拓海さんは俺のなのにー。」などと拗ねながら、生徒用の丸椅子に座ってスニーカーソックスを履いた。
拓海は少しだけ怖くなり、取り出した本を机に置いて、智裕の背中に回って抱きついた。それだけで安心してしまう。
「た、くみさ…ん?あ、汗くさいよ?」
「ん……やだ……ぎゅーしたいの……。」
(学校で甘えん坊さんモード発動⁉︎無理無理無理、俺の理性!)
「た、拓海さん!ここ学校だし!つーかもう水上来るし!」
「何で…僕を頼ってくれないの?僕だって……智裕くんの力になりたいのにぃ…。」
「……あー…ごめん。でも水上はただの後輩だし、大丈夫だって、な?」
智裕はどうにか拓海を引き剥がし、慰めるように額にキスを落とした。
拓海はまだ頬を膨らませて拗ねているので智裕は指で突く。
「俺は拓海さんがいるから頑張れるんだよ、俺。拓海さんがいつも頑張ってるから、俺も頑張んなきゃなって思えるんだ。」
「……うん。」
「つらくなったら、すぐに拓海さんのところに行くから、ね?」
そして智裕は手を引っ張って、拓海と顔を近づけて。
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