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マツダくんのデブエット作戦⑧

 智裕は水上といつものファストフード店に入った。 「少なっ!Mサイズでよく足りるな。」 「セット2つとか吐き気がするんだけど。」  水上のトレーにはビッグバーガーのLサイズポテトセットとエッグベーコンバーガーのサラダセット、そしてチキンナゲットと単品でトマトバーガーと軽く3人前の量が載っていた。  智裕はチーズバーガーのMサイズポテトと単品でベーコンバーガーだけだった。 「これくらい食べねーと、また3時から練習だし持たねーよ。」 「うげぇ……俺これでも食ってる方だと思うんだけど。」 「まっつんが好きな和佐(かずさ)さんだってもっと食べてっぞ、あのババア婚活しなきゃーとか言ってんのに大食漢も肝冷やすっつの。」  いひひ、と悪戯っぽく笑っていたら水上の背後から不穏な影が近づいていた。 「だーれが大食漢だってぇえええ!このガキぃ!」……げ!和佐さん⁉︎何でここにいんだよ!」 「え⁉︎か、和佐咲凜(エミリ)⁉︎本物⁉︎」 「え?何、(レン)の友達?」 「つーかナチュラルに座んな!このデカ女!」  水上を一発叩いて、その隣に座ったポニーテールの女性は智裕も知っている有名人だった。 「すげー!マジで和佐咲凜だ!」 「どーも、蓮と同じ実業団に所属してます、和佐です。知ってくれてるみたいで嬉しいな。」 「こ、こちらこそ!俺は水上くんのの松田です!」 「あー、君が“東の松田”ね。甲子園すごかったらしいじゃなーい。何、蓮ってばこんな旬な人物と仲良しなんだー。」  水上と背丈の変わらない和佐は嫌そうな顔をしながらハンバーガーを食べる水上の肩を組んだ。 「まっつんが相談あんだってよ。なんかあと10kg増やさねーとマズイんだって。和佐さんも食トレのアドバイスあげてよ。」 「んー…タンパク質とビタミンをいっぱい摂らないと、かしら?炭水化物ばかりで増やしてたら糖と脂肪になるし…ちょっと待って。」  それから智裕は水上と和佐のアドバイスに耳を傾け、スマホにメモを残し、そして最終的に和佐の奢りで水上と同じ量のメニューを食べさせられた。

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