722 / 1000

マツダくんのデブエット作戦⑨

「うっぷ……。」 「そんで少しお腹を落ち着かせて、ダウン運動をして…って感じね。」 「ありがとうございます……うっぷ。」 「まっつん、本当に少食だな。そりゃ痩せるよ……他の奴の何倍もトレーニングしてんだからさ。代謝に対してエネルギーが足りなさすぎ。」 「うん……わかった……すげーなガチのプロのスポーツ選手って…。」  智裕は水上を心強く感じたと同時に、本当にとんでもない世界の住人だと恐怖を覚えた。  3年前に初めて会った時の何倍も大きく成長している水上が頼もしい。 「松田くんは将来どうするの?」 「へ?」 「高卒でプロ目指すの?」  穏やかな表情で和佐が訊ねてきた。智裕は少し俯いて、黙って、考えた。 「まだ、決められないんです……。」  本心だった。  その言葉に水上は驚いた表情をした。 「でもこの世界大会が終わったら決めないといけないと思ってます。」 「そうね…私もこの歳で何度か迷ったことがあったわ。」 「マジかよババア。」 「蓮、黙って。」  和佐の笑顔に殺気が含まれていた。 「蓮は高校バレーを捨ててまでプロになることを決めたから分からないかもしれないけど、普通はこんなもんよ。」 「へー。」  理解できないというような顔をしながら、水上は追加で頼んだソフトアイスを頬張る。

ともだちにシェアしよう!