729 / 1000

マツダくんと戦友④

 ビシッとした紺のスーツに、黒い革靴、スタイリッシュな高級腕時計、そのフォーマルな格好に見合った黒のオールバックで決めた、モデルのような男性がコツコツと足音を立てて智裕たちに近づいてきた。 「こんにちは、松田智裕くん。」  爽やかな笑顔は智裕に向けられた。 「………………まっつん?」 「アカン、気絶しとる。」 「ガチファン過ぎて引くわぁ…。」  中川たちが智裕にツンツンとつついたり小突いたりしても智裕は動けずにいた。頭の中もフリーズしていた。  そんな様子に笑顔の男性は苦笑し、智裕に近づくとさっき後藤と握手をしたままに固まった智裕の右手に握手をした。  その瞬間、大人しかったマスコミたちが一斉に智裕たちを囲みカメラやスマホで2人をバシャバシャと撮影し始めた。 「あ…………あの……と……。」 「また後で改めて挨拶するけど、君たちのコーチをさせてもらう由比壮亮です。よろしくね。」 「…………は…ひ……ぃ……。」  由比が握手を辞めて「じゃあ、またあとで」と手を振って去っていくと、智裕は後ろに倒れた。 「トモちーーーん!」 「まっつん!しっかりせぇ!」 「もうすぐ決起集会始まるって松田!」 「あー、こりゃダメやね。シュンちゃん担いでやんないや。」 「せやなぁ……よっと。」  さすがに担ぐことは出来なかったが、お姫様抱っこをして一行は会場へと向かう。

ともだちにシェアしよう!