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マツダくんと戦友⑥

 まず最初にマイクを持ったのはスキンヘッドの厳つい顔で眼鏡をかけた男性。 『どうも、えー今回のU-18日本代表の監督に就きました、関本(せきもと)でございます。選手の保護者の方々には…“乱闘将軍”などのイメージがあると思いますが、私も年を取り丸くなりました。選手には一切あのような横暴は致しませんのでご安心下さい。』  関本監督の現役を知る父親たちはドッと笑ったが、選手たちは引きつった顔で笑っていた。勿論、智裕と八良も同様だった。  関本比佐志(ヒサシ)、およそ10年前に43歳で引退した伝説の野手。  約20年の現役生活で打点王3回、ホームラン王5回、ベストナイン9回という輝かしい生涯成績を残している。  スキンヘッドと強面に加え、闘争心剥き出しのプレー、何よりもよく乱闘を起こしていたため、「乱闘将軍」として智裕たちも認識していた。  智裕はU-18に招集されて、関本氏の動画を見て震えあがってしまった。  「なんやワレボケェ!」「このXXXX野郎がぁ!」「帽子とらんかい!若造がぁ!」と関西弁でまくし立てる姿はさながらVシネマのようだった。 『続きまして、由比壮亮投手総括コーチ、お願いします。』  視界に促されてマイクを持ったのは、先ほど智裕が握手した智裕の神様。  智裕は一気に野球少年のキラキラした目になった。 『先日、田中コーチと替わりに就任致しました、由比と申します。私は昨年まで“東京スピンズ”で選手としてプレーしておりました。首脳陣の中では圧倒的に若いので選手の皆さんのお兄さんみたいな存在になれたらと思います。若輩者では御座いますが、このチームを、日本の野球を世界一にする為に私の精一杯で尽力致します。どうぞ宜しくお願いします。』 (神様がお兄さんみたいな存在になっちゃうの?はあああああ!これ夢だろ?夢だよなぁ……!)  挨拶を終え椅子に座った由比は、投手チームが固まっている方を見た。  1人だけとんでもなく目を輝かせている選手を見つけるとその目を見つめてウインクを投げた。  投げられた本人は顔を真っ赤にして下を向いた。隣に座るもう1人のエースは思った。 (恋する乙女か!キモいねんトモちん!)

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