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夏休み閑話【夏風邪】②

 智裕がシャワーを浴びて部屋着に着替えて食卓に向かうと、本当に自分の分の夕飯がなかった。これは本格的に家を追い出されるパターンだと諦めた。 「お粥くらい作れるでしょ?」  そう言って手渡されたのは生米を浸水させてるタッパーだった。 「作れるけど……え、生米から⁉︎」 「ご飯は智之が食べ切っちゃったのよ。」 「とーもーゆーきー!」  智之は悪びれる様子もなくデザートのプリンを堪能していた。  茉莉も同じくプリンを幸せそうな顔で食べていた。 「あとプリンと、プロテインゼリーと、スポーツドリンクと風邪薬…熱冷ましシート…こんなもんかしら。」  それらを乱雑に入れられたスーパーの袋を渡される。  ちなみにプロテインゼリーとスポーツドリンクは智裕用のストックから勝手に引き出されたものだった。 「あ、あと氷枕ね。テキトーなことすんじゃないわよ。」 「分かってるっつーの……はぁ。」  とうとう松田家でのヒエラルキーが隣の家の幼女より下になったことを実感し、智裕は荷物を持って隣の家に向かった。

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