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夏休み閑話【入れ替わってる?】⑥
夕方、里崎宅は更に石蕗親子を招集し賑やかになった。
「うーん……こんなこと現実でありえないよねぇ……。」
養護教諭の拓海はスクールカウンセラーも兼ねているので心理学も普通の人より知識があるということで宮西と直倫を診てもらった。
しかし拓海でも根を上げてしまう状態であった。
「ごめんね、ここまで詳しいこととか知らなくて。」
「謝んなくていいよ、普通にあり得ないし。」
「そうそう。夕方のツワブキちゃんってエロいよね。」
「椋丞!」
「でも2人の力になりたかったんだけど。」
「ぱーぱ。たぁー!」
「拓海さん、可愛い。」
「かあいー!」
「あー、石蕗親子の癒し最強だわー。智裕邪魔殴りてぇ。」
「とりあえず今日はどうするんだよ。宮西も赤松くんも。」
至極真っ当な心配を一起が言うと、全員頭を悩ませた。
「あ、明日朝練だよ。軽いメニューだから打撃とキャッチボールとランニングかな。」
「おいおい、赤松の身体でも宮西死ぬんじゃね?」
野球部の野村と智裕は、宮西の体力の無さを知っているのでそれが懸念だった。
「俺が得意な運動は夜の前後運動だけだ。」
「爽やかなイケメンが言うセリフじゃねーぞ。」
品行方正な直倫の声でとんでもない下ネタが連発されている。
そんな中でスマホで時間を確認した裕也は気がついた。
「里崎、そろそろ宮西の家って弟たち帰ってくるんじゃないか?」
「あーそんな時間かー。とりあえず、赤松くん、今日は椋丞に成りきって椋丞の家で過ごそうか。」
「え、でも大丈夫ですか?」
「賢い弟の大介には話しとくし、今日も椋丞のお母さんは朝まで帰って来ないし。」
戸惑う宮西の声が新鮮すぎて蓉子は少し笑いそうになった。
「赤松、お前料理出来んの?」
「まぁ少しは……。」
「今日はチキン南蛮にする予定だからよろしくー。」
直倫の声なのに気が抜けているのは宮西の人間性が如実に現れている証拠だった。
「何だろう…赤松くんの中に入ってる宮西くん、何でこんなに順応してんだろ?」
「宮西って図太すぎるくらい図太いからな。」
「で、俺どーすんの?赤松んチ?」
「いや、裕也さんと家族以外が入るのは嫌なんでやめてください。」
「えー、高級マンション入りたかったー。」
当人たち以外は「入れなくて正解だよ」と心の中で叫んだ。
「しゃーねぇから、椋丞は俺んチ泊まれ。明日起こしてやるから。」
「じゃあ大竹の姉貴のおっぱい触っていい?」
「お前殺されるぞ。」
「うーん……どうにかなるのかなぁ?」
「宮西はどーでもいいけど赤松が不憫だな。」
「ぷー!」
先行き不安な中、今日のところは解散した。
宮西の身体になった赤松は里崎と宮西の家へ。直倫の身体になった椋丞は裕也の家に泊まり様子を見ることにした。
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